- あなたは、100歳まで生きる未来を想像できますか?
- 100歳まで生きるとしたら、いつまで働いていたいですか?
- 今の仕事や生活は、今後変わることがないと言えますか?
- 100歳になったあなたは、「今のあなた」をどう評価すると思いますか?
「人生100年時代」という言葉のきっかけとなった「LIFE SHIFT(ライフシフト) 100年時代の人生戦略」という本をご存じでしょうか?
今まであたりまえだった「勉強して、就職して、60歳で引退して老後を楽しむ」といったことは、残念ながら現実的ではなくなっていきます。
寿命が伸びれば、それだけ「長生きリスク(思ったより長く生きてしまい、お金が足りなくなるリスク)」の可能性も高くなります。
また、そのような資金問題だけでなく、スキルや健康、人間関係といった「見えない資産」をどのように育んでいけば良いのか?といった問題にも直面していきます。
今後、「どのような時代になるのか?」「どのような生き方が求められるのか?」そして、「どのような資産が重要なのか?」「どのように人間関係を作って行けば良いのか?」
本書はこのような「新しい生き方」「自分らしい人生」を歩む手がかりを教えてくれます。
人生100年時代とは
人生100年時代とは、その名の通り「多くの人が100歳まで生きる時代になっている」ということです。
長寿国の平均寿命は、10年ごとに平均2~3年のペースで上昇しており、1914年生まれの人が100歳まで生きる確率は1%しかありませんでしたが、 2007年に生まれた子供の50%は107歳まで生きることが予想されています。
厚生労働省は、2020年の全国の100歳以上の人口は8万人を超え、なんと50年連続で過去最高を更新し続けていると発表しました。
このようなデータから、著者たちは、
- 100年以上生きる時代を過ごすつもりでいたほうが良い
- 私たちはより若く、より健康に長い時間を過ごすかつてないチャンスを手にしている
- 人生が長くなれば、変化を経験する機会が増える
- その時に備えて「選択肢を持っておく」ことで価値を高めることができる
などと説明しています。
「100歳になった自分が今の自分をどう見るのか、あなたが下そうとしている決断は、未来の自分の厳しい評価に耐えられるのか?」この問いこそ、長寿化に向き合う上で最も重要なことだと指摘します。
著者プロフィール
【リンダ・グラットン】
ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。
2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。
【アンドリュー・スコット】
ロンドン・ビジネススクール経済学教授、前副学長。オックスフォード大学を構成するオール・ソウルズカレッジのフェローであり、かつ欧州の主要な研究機関であるCEPRのフェローも務める。
3ステージからマルチステージへ
私たちよりも上の世代の人たちは「①教育」「②仕事」「③引退」といった3つ順番(3ステージ)に固定化されたものでした。
そして現代に生きるほとんどの人も、これが「あたりまえ」だと思っていると思います。
しかし、健康寿命も伸び、人生100年時代に突入する私たちは、これまでのような「60歳を過ぎたら引退して、年金を貰って老後生活を満喫する」といったことはできず、80歳まで働くことが当たり前の時代になっていくことでしょう。
だからこそ「LIFE SHIFT(ライフシフト)」つまり、生き方を変えていく必要があるということです。
リストラ・終身雇用の崩壊
「良い大学に入って、一流企業に就職すれば人生は安泰だ」そんな時代ではなくなっています。
日本政府としては、企業に対して70歳までの雇用を促したり、人生100年時代に対しての雇用問題に対策を講じようとしてはいますが、実際には大手企業での大規模なリストラや、終身雇用の崩壊が進んでいます。
今までの年功序列によって、給料が高くなっている中堅~ベテラン社員は、特にリストラの対象となり、黒字の一流企業にいたとしても決して安心できる状況ではないということです。
また、経団連や大手企業の経営者も「終身雇用はもう無理だ!」と訴えています。
近年、終身雇用となってしまうリスクを避けるために、「特別退職金を提示」するような、退職勧奨という実質的なリストラも増えています。
つまり、国の思惑とは異なり、企業としては「終身雇用」も「年功序列」も現実的ではなく、今まで「あたりまえ」だった労働環境は、簡単にひっくり返る恐れがあるということを示唆しています。
技術の革新による働き方の変化
過去100年をみても、世界大戦、ロシア革命、共産主義の興亡、テレビ・ラジオ・自動車の開発、インターネット、AI技術の普及など、世界を動かす大きな出来事や技術の革新が行われてきました。
そして現代では、さらにスピードを上げて技術開発が進み、より多くの情報に溢れた時代となっています。
これまで以上に、働き方に変化が訪れることが予想されています。
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書、【21世紀の資本】でも、「過去30年で1.5倍の生産性(技術革新)が向上した。であれば、当時の1/3の仕事は今は存在していない」といったことを語っています。
将来を考えると、自分の就職先が倒産するリスクだけでなく、「その業種・職種自体が無くなる」という恐ろしいリスクも考えられます。
「業界の枠を超えた転職」はあたりまえとなり、そのためのスキルも求められます。
今までのような「ひとつの職業に就き、定年までやり遂げる」といったことは通用せず、多様化したスキルと、時代に合わせた柔軟な対応力が求められる時代になっていきます。
知識をアップデートし続ける必要がある
働き方が変化するということは、「今までの知識だけでは対応しきれない」ということにもなります。
今までのように、学生時代に学んだことと、就職した当初に覚えた知識のみで100年時代を生き抜くことはできません。
80歳まで働く可能性を考えれば、学生時代までの「学び」だけでは知識が乏しくなるのは明らかです。
技術革新が進む現代においては、常に知識をアップデートしていく必要があります。
より長く・健康に・柔軟に働く必要がある
老後2000万円問題などといった、公的年金を不安視する話題が絶えません。
さらに、寿命が伸びているということは、実際にあなが老後を迎える頃には「2000万円以上」貯めておかなければ安心できない時代に突入しているかもしれません。
今までのように「60歳で引退して余生を楽しむ」といったことはできず、80歳まで働き続けることが必要となります。
であれば「より長く、より健康に、より楽しく働き続ける」ことが求められます。
だからこそ、「仕事一筋で、人生の豊かな時間をすり減らすような働き方」は避け、仕事だけでなく、「学び」や「遊び」のバランスを取りながら、健康で柔軟な人生を設計していくことが重要となります。
人生の選択肢を広げる
ひとつの仕事に人生を捧げるのではなく、将来への選択肢を広げ、2つ3つのキャリアを持ち、再創造を繰り返していくような時代が訪れます。
ステージを変えるごとに新たな能力を身に付け、人脈も広げ、より強くなっていく。
こうしたことを繰り返していくためにも「自己投資」は必要不可欠です。
「自分らしく生きるとはどういうことなのか?」ということをイメージして、やりがいや高揚感を持って楽しめる人生を選択する事が必要です。
思春期が長くなる
働く時間、健康寿命が長くなれば、同時に思春期も長くなります。
働く時間だけではなく、自分を見つめ直したり、遊ぶ時間も大切なことです。
働き方はより多様化され、より自由に働くことができます。
- 人生の旅をして、自分と世界を再発見する
- 組織に雇われずに、自分で仕事を生み出す
- 経験や知識を活かして、異なる種類の活動を同時に行う
など、これら複数のステージを経ることで、学び、遊び、仕事の境目がなくなって、若々しく人生を歩めるようになります。そうやって100年時代を作っていくのです。
最も大切なのは【無形資産】
マルチステージを生きるために、著者たちが最も重視しているのは、「無形資産」です。
資産には「有形資産」と「無形資産」の2種類があります。
「有形資産」とは、金融資産や不動産資産、などを差し、もちろんこれらは重要ですが、有形資産だけにとらわれていれば、人生100年時代には立ち行かないと指摘します。
一方「無形資産」とは、目に見えないもの。例えば、家族や友人との良好な関係など、実際には換金できない事を差します。
そして無形資産には、
- 生産性資産
- 活力資産
- 変身資産
の3種類に分けられます。
①生産性資産とは
生産性資産とは、主に仕事に役立つ知識やスキルのことです。
技術革新が進む現代においては、学生時代に学んだことや、キャリアの初期に学んだ知識だけでは太刀打ちできません。
仮に80歳まで働くとして、今30歳の人の知識は、その時になれば「50年前のノウハウ」ということになります。
環境や時代の変化に合わせて、常に情報もスキルもアップデートして行く必要があります。
また、仲間とのネットワークや社会的な評価も大切です。
会社で良い成績を上げてきた人でも、転職してみるとなかなか結果を出せずに苦しむ人も多くいます。
成績が良かったのは、その会社特有の資源や組織文化などが関係していることが考えられ、その人自体の能力ではなかったということになります。
つまり、相互補完できる人たちや、信頼できる仲間たちとの協力関係を築くことが最も大切になります。
イノベーションを生む力や想像性、チームと共感し、モチベーションを上げる人間力が求めらます。
②活力資産とは
活力資産とは、健康や、良好な家族・友人との関係の事です。
寿命が伸びるからといって、誰しもがずっと「健康」で長生きできるかはわかりません。
長寿化時代において、明晰な脳を保ち続けることは、とても大きな意味を持ちます。
健康を維持することは、それだけも価値が高くなるということです。
そのためには、バランスの取れた生活を送り、肉体的・精神的な健康の維持、家族・友人との良好な関係が求められます。
例えば、仕事によるストレスは健康に大きな影響を与えますが、それを発散する場所が必要不可欠なのです。
だからこそ、大切になるのが家族や友人との関係です。
家族との関係が良好であれば、仕事にも良い影響が出ますが、関係が悪ければさらにストレスが溜まってしまいます。
また、長い年月をかけ、深く結びついた友人との関係も長く生きるほど価値が高くなっていきます。
他人との結びつきが強い人は、エネルギッシュで前向きで傾向がみられます。
③変身資産とは
変身資産とは、変化に応じて自分を変えていく力のことです。
人生100年時代の「マルチステージ」を生きていくためには、柔軟な対応力と、新しいステージへ移行する意志が求められます。
その変化への対処能力を高めるために、3つのポイントがあります。
- 自分についてよく理解し、自分の将来の可能性を知ること
- 多様なネットワークを幅広く持ち続けること
- 積極的に新しい経験をしていくこと
つまり、結局は「自分はどうあるべきか」「自分はどうなりたいか」といった、「自分を変えたい」と言う強い気持ちを持つことと、常に新しい価値観を手に入れるための交流や経験が重要だということです。
100歳まで生きるということであれば、何かを始めるのに「遅い」といったことはありません。変わる可能性はいくらだってあるし、何度変わっても良いのです。
時間とお金の使い方を考える
マルチステージの人生を歩むためにはお金と時間の使い方を見直す必要があることにも言及しています。
金融リテラシーの向上や、ライフワークバランスを見直すことが求められます。
「自分はどのように時間を使い、いつどうなっていたいのか」を想像することが大切です。
有形資産と無形資産、どちらもバランス良く構築していくためには、ワークライフバランスが最も重要です。
まとめ
100歳まで生きることが”あたりまえ”の「人生100年時代」に突入しています。
- 従来の「3ステージ」から「マルチステージ」へ移行していく
- 働き方の変化によって、常に学び続ける必要がある
- 健康に長生きすることの価値が高まる
- スキルや仕事仲間との関係性の向上が求められる
- 家族や友人との良好な関係がとても大きな意味を持つ
- 変化を恐れず、柔軟に対応する力が求められる
「100歳になった自分が今の自分をどう見るのか、あなたが下そうとしている決断は、未来の自分の厳しい評価に耐えられるのか?」この問いを常に考え続けることで、後悔しない人生を歩んでいくことができるのではないでしょうか?
資産への投資はもちろんですが、「自己投資」も必要不可欠な時代となっていきます。
時代の変化はこれまで以上に早くなり、多様性・柔軟性・積極性がより求められていきます。
人生100年時代。何かを始めるのに「遅い」ということはありません。
未来を変えるためには、今から行動することです。
何が正解かはわかりませんが、「行動すれば正解に近づくことができる」ことだけは確かです。
「投資」も「自己投資」も似ています。
長い目でみて、目標に向かって、地道にコツコツと続けていく。
多様化して、多くの選択肢を持っておくことで、どんな時代にも対応できる。
「自分はどう生きるのか?」たくさん悩んで、自分らしい人生を歩むために行動しましょう!
【まんが版 LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略】はこちら